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日別アーカイブ: 2025年11月14日

最期の時間に寄り添う

こんにちは、青光社ブログ更新担当の中西です。

 

~最期の時間に寄り添う~

 

 

私たちは、いわゆる「葬儀屋」と呼ばれる仕事をしています。

葬儀というと、多くの方にとっては一生のうちにそう何度も経験することではありません。
だからこそ、いざその場面が訪れたときに、

「何から手をつけていいのか分からない」
「費用はどれくらいかかるのか不安」
「本当にこれで故人は喜んでくれるだろうか」

といった戸惑いや不安の声をたくさん耳にします。

葬儀屋の役割は、単に「式を運営する業者」ではありません。
ご家族の戸惑いや不安を少しでも軽くし、故人とのお別れの時間を、その人らしく、悔いの少ないものにするために、そっと寄り添いながらサポートするのが私たちの仕事です。

ここでは、葬儀屋がどのような想いで仕事をしているのか、そして実際にどんなことをしているのかを、できるだけ分かりやすくお伝えしてみたいと思います。


1.「いざというとき」から始まる葬儀屋との関わり

多くの場合、私たち葬儀屋とご家族のご縁は、突然の一本の電話から始まります。

病院や施設から
「今、家族が亡くなりました。どうしたらいいでしょうか」
というお電話をいただくこともあれば、
自宅で看取られたあとに、かかりつけ医の先生が死亡診断書を書かれ、その後に連絡をいただくこともあります。

ご家族は、長い看病の日々を終えた直後だったり、突然の訃報にまだ気持ちが追いついていなかったりと、冷静な判断がしづらい状態にあります。

その中で私たちがまず行うのは、
「何かを決めてもらうこと」ではなく、
「今どこにおられて、何が一番不安か」を一つずつ整理していくことです。

・今いらっしゃる場所(病院・自宅・施設など)
・ご安置場所をどうするか(ご自宅か、葬儀社の安置施設か)
・今できること、今はしなくてよいこと

これらをゆっくり言葉にしながらお聞きし、
「今はここまでで大丈夫です」「この書類はあとからでかまいません」
と、優先順位を伝えていく。

この最初の数時間が、ご家族にとっては大きな安心感につながる時間だと感じています。


2.ご安置から打ち合わせまでの流れ

お迎えの搬送車で故人をお連れし、ご安置が済むと、今度は葬儀の打ち合わせに入っていきます。

打ち合わせの際、最初にお聞きするのは、
「故人はどんな方でしたか?」ということです。

・お生まれになった場所
・お仕事やご趣味
・大切にされていたもの
・家族との思い出

こうした話をうかがうことは、直接的には葬儀の段取りとは関係ないように見えるかもしれません。
ですが、実はここにこそ、その方の葬儀を「その人らしく」するためのヒントがたくさん隠れています。

花がお好きだった方であれば、祭壇に季節の花を多く取り入れたり、
音楽がお好きだった方であれば、開式前に生前よく聴いていた曲を静かに流したり、
お酒が大好きだった方であれば、祭壇のそばに愛用の徳利やグラスを飾ったり。

葬儀という限られた時間の中で、どれだけその人らしさを表現できるか。
そのためにも、打ち合わせでは形式や金額の話と同じくらい、故人のお人柄についてお話をうかがうようにしています。

もちろん、現実的なお金の話もしなくてはなりません。

・参列者の規模はどれくらいか
・家族葬にするのか、一般葬にするのか
・宗教者(お寺・神社など)とのお付き合いはあるか
・通夜・葬儀の二日間で行うのか、一日葬にするのか

これらを整理しながら、プランとお見積りを作成し、
可能な限り「想い」と「現実」のバランスが取れるよう、ご提案していきます。


3.葬儀屋の裏側の仕事

打ち合わせが終わると、葬儀屋の現場としての動きが一気に活発になります。
ご家族の目にはあまり触れない部分も多いですが、実はたくさんの準備がその裏側で行われています。

・式場や安置室のスケジュール調整
・宗教者への連絡と日程の確認
・火葬場の予約
・祭壇の設営、人員の手配
・お通夜・葬儀で使用する備品(遺影写真、香典帳、返礼品など)の準備
・会葬礼状や受付体制の段取り

葬儀は「やり直しがきかない一度きりの儀式」です。
そのため、段取りや時間の管理には細心の注意が求められます。

また、ご家族の前では落ち着いて見えていても、
裏方では何人ものスタッフが連携しながら、
抜け漏れがないかを何度も確認し合っています。

葬儀屋の仕事は、
「表舞台に立つこと」よりも、
「表舞台を支えるために、裏で動き続けること」がほとんどなのです。


4.お通夜・葬儀当日の葬儀屋の役割

お通夜・葬儀当日、葬儀屋の担当者は、ご家族のすぐそばで動きます。

・ご家族の控室へのご案内
・お寺様(神父様・牧師様など)のご案内と進行確認
・式次第の説明
・焼香や献花のタイミングのご案内
・会葬者の受付・誘導スタッフの管理
・マイク・照明・音楽などの進行操作

特に大切にしているのは、
「ご家族が、故人との時間に集中できるようにする」ことです。

進行上、どうしても確認が必要なことはありますが、それ以外はなるべく事務的なことを意識させないように、お声がけのタイミングや回数も配慮しています。

また、ご家族は気丈にふるまっていても、
式が進むにつれて、ふと涙があふれてしまうことも少なくありません。

そんなとき、私たちにできることは、
無理に言葉をかけることではなく、
そっとハンカチやお茶を差し出したり、
少し席を外す時間をつくったりすることかもしれません。

葬儀屋は「進行を管理する人」であると同時に、
「その場の空気を感じ、必要な支え方を選ぶ人」でありたいと考えています。


5.葬儀が終わったあとに始まるサポート

意外に思われるかもしれませんが、
葬儀が終わったあとにも、葬儀屋の仕事は続きます。

・役所への手続きに関するご案内
・香典返しや挨拶状のお手伝い
・四十九日法要、一周忌法要などの相談
・お墓や納骨堂、仏壇・仏具に関する相談

など、葬儀後のご家族には、まだまだやらなければならないことがたくさんあります。

一度にすべてを終える必要はありませんが、
「今はここまでできれば大丈夫です」「これは四十九日までに考えていきましょう」
といった目安をお伝えすることで、少しずつ気持ちと生活を整えていけるようにお手伝いします。

また、最近では「事前相談」のご依頼も増えています。
ご本人やご家族が、元気なうちから

・もしものとき、どのくらい費用がかかるのか
・家族葬と一般葬の違いは何か
・自宅での見送りと式場での葬儀、それぞれのメリット・デメリット
・自分が希望する形を残しておけるのか

といったことを相談にみえるケースです。

事前相談をしておくことで、
いざというときのご家族の負担が軽くなるだけでなく、
「自分らしい最期の迎え方」を、ある程度自分で選ぶこともできるようになります。

葬儀屋としても、
事前にお話をうかがっておくことで、より本人の意向に沿った葬儀の形を提案しやすくなります。


6.葬儀屋として大切にしている三つのこと

私たち葬儀屋が仕事をするうえで、大切にしていることが三つあります。

一つ目は、「押しつけないこと」です。
葬儀には地域性や宗教的な慣習もありますが、何より大切なのは、ご家族や故人の価値観です。
「本来はこうあるべきだ」と一方的に押しつけるのではなく、
いくつかの選択肢を提示し、その中からご家族にとって一番納得できる形を選んでいただくことを心がけています。

二つ目は、「分かりやすく説明すること」です。
初めて葬儀を経験する方にとって、専門用語や仕組みは分かりづらいもの。
費用の内訳や、式の流れ、必要な準備などを、できるだけかみ砕いてお話しすることで、
「知らないまま決めてしまった」という不安を減らすことができます。

三つ目は、「感情に寄り添うこと」です。
ご家族の中には、突然の別れに現実を受け止めきれない方もいれば、
看病を長く続けてこられ、安堵と喪失が入り混じった複雑な心境の方もおられます。

どの感情も「間違っている」ものではありません。
その気持ちを否定するのではなく、
「今はそう感じておられるのですね」と受け止めたうえで、
必要なことだけを一つずつ一緒に考えていく。
そうした姿勢を何より大事にしたいと考えています。


7.葬儀屋という仕事を選んでよかったと思う瞬間

葬儀屋という仕事は、華やかさとは無縁かもしれません。
夜間・早朝の出動もあり、心身ともに楽な仕事とは言えません。

それでも、この仕事を続けていてよかったと感じる瞬間があります。

・葬儀後に、ご家族から「あなたが担当で本当に良かった」と言っていただけたとき
・ご高齢のご夫婦で、遺された方が少し笑顔を取り戻し、「また遊びに来てくださいね」と声をかけてくださったとき
・何年か経って、別のご親族の葬儀で再びご依頼いただき、「前のときもお願いしたので」と言ってもらえたとき

私たちは、主役ではありません。
主役はあくまでも故人と、そのご家族です。

そのお別れの時間に、そっと寄り添い、支えることができる。
その積み重ねこそが、葬儀屋としてのやりがいだと感じています。


8.「もしものとき」は、ひとりで抱え込まないでください

誰もが、できれば考えずに済ませたい「死」と「葬儀」というテーマ。
しかし、誰にとっても必ず向き合わなければならない日が来ます。

そのときに、
何もかもを「自分だけでどうにかしなければ」と抱え込む必要はありません。

「何から聞けばいいか分からない」
「まだ具体的な話ではないけれど、不安がある」

そんな段階でも、葬儀屋に相談していただいて大丈夫です。
むしろ、そうした余裕のあるタイミングのほうが、冷静に選択肢を考えることができます。

葬儀屋は、
悲しい出来事を扱う仕事ではありますが、
決して「暗いだけの仕事」ではありません。

故人が歩んできた人生を尊重し、
その人らしいお見送りの形を、
ご家族と一緒につくっていく仕事です。

もし、葬儀のことで心に引っかかっていることがあれば、
どうか一人で抱え込まず、いつでもご相談ください。

最期の時間が「悲しみだけ」ではなく、
「感謝」や「ありがとう」とともに締めくくられるように。
葬儀屋である私たちは、これからも一件一件のご葬儀に真摯に向き合っていきたいと思います。